この記事では、2021年8月に政府から発表されたMM2Hの最新情報(2021年11月13日時点)を元に解説します。
過去からの変遷を振り返りながら、今後のMM2Hビザに関する展開も予測していきます。
記事を書いている私は、マレーシアのMM2Hビザの取得をサポート長きに渡りしてきました。
断片的な情報が錯そうしてMM2Hについて不安を抱えている人も多いと思いますが、最後までお読み頂くことで、詳しく理解できるはずです。
そもそも、マレーシアの長期滞在ビザ MM2Hについてよく分からないという方は、【2021最新】マレーシアの長期滞在ビザMM2Hを徹底解説 を参考にしてみてください。
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マレーシアMM2Hの要件変更の経緯と理由
まず始めに、要件の改定が噂されているMM2Hについて、経緯や理由を解説していきます。
今までに何度もあったビザ(MM2H)の内容変更
1988年、マレーシア政府は観光輸入や海外からの投資を活性化させる施策として、50歳以上の外国人退職者を受け入れる制度として、「シルバーヘア・プログラム」を作りました。
その制度は裕福で高齢な日本人とヨーロッパ人を選別的に受け入れる制度でした。
そのため、政府の当初目標とした2万人に遠く及ばず、2001年までに承認されたのはわずか828件でした。
そこで、2002年にマレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)を新設し、申請者の年齢や国籍の大幅な緩和を行いました。
新設当初は、夫婦・単身というカテゴリー分けもあり、それに応じて必要な定期預金額が異なるなど、現在とは内容がかなり違っていました。
その後、2007年、2011年の変更を経て、資産要件と収入要件の金額が除々にアップしてきたという流れです。
現在、MM2Hの要件変更が大きな話題となっていますが、それ自体は歴史をさかのぼると今まで何度もあったことです。
この10年ぶりの要件変更は、むしろ必然といえるものなのです。
発給一時停止の理由
MM2Hは、比較的容易に取りやすいビザと言われています。
そのため、MM2Hを取得して、マレーシアに移り住んだ人たちが、不法就労することが問題視されていました。
その結果、「国家の安全性がむしばれてしまうのでは?」
という指摘もあり、制度の見直しの検討は数年前からもされていました。
また、東南アジアを中心とした諸外国ではこの10年間の経済成長で物価が上昇しています。
「経済的要件が諸外国のビザに比べ、相対的に低いのではないか?」との懸念も問題視されています。
そして、2020年に新型コロナの感染拡大が決定的な引き金となり、MM2Hは新規受付を完全にストップする事態になったわけです。
昨年から今年までの経緯
2020年〜現在に至るMM2Hの発給再開に向けた経緯をまとめると、以下のようになります。
新型コロナの蔓延によりマレーシアではロックダウン、ビザ関係はほぼ停止
マレーシア観光芸術文化省(MOTAC)のMM2Hビザの窓口業務が閉鎖
入国管理局に機能が移転。
この時点では、新規申請がほとんど否定され、その理由は「内容の見直し」と報告されていた。同時に2020年の12月までには再開するとの見解が発表された。しかし、ロックダウンにより延期。
10月に新しい条件で再開する方針を発表するも、各方面からの反対を受け見直し。
既存のビザ保有者には、新しい条件は一部を除き適用しない方針を発表
結論として、
2021年8月の新要件を発表はしているものの、現在も新規のMM2Hの受け付けは再開していないのが現状です。
要件の変更内容(予定)
2020年8月11日にマレーシア内務省より発表された、MM2Hの新規申請の再開に関する内容は以下の通りです。
新旧の条件を比較します⇣
変更内容 | 新条件 | 旧条件 |
---|---|---|
プログラム参加者数 の上限 | マレーシア国民総人口の1パーセントを超えない水準 | 制限なし |
無犯罪証明の提出 | 申請者全員 | 主たる申請者のみ |
年齢制限 | 35歳以上と50歳以上にカテゴリー分け (従たる申請者については発表なし) | 主たる申請者は20歳以上 従たる申請者は制限なし |
滞在日数 | 90日以上(35歳以上50歳未満) | 制限なし |
収入要件 (マレーシア国外) | 月額4万リンギット(約100万円)以上 | 月額1万リンギット(約25万円)以上 |
資産要件 (保有流動資産額) | 150万リンギット(約4,000万円)以上 | 50万リンギット以上(50歳未満) 35万リンギット以上(50歳以上) |
定期預金額 (マレーシアの銀行) | 100万リンギット以上 (50歳未満は従たる申請者ごとに一人5万リンギットを加算) | 30万リンギット(50歳未満) 15万リンギット(50歳以上) |
有効期間 | 5年更新 | 10年更新 |
年間パス料金 | 500リンギット | 90リンギット |
手続き費用 | 主たる申請者 5,000リンギット 従たる申請者 2,500リンギット | ない |
出典:マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)プログラムの再開、新規申請に関するマレーシア内務省発表内容 | 在マレーシア日本国大使館
上記で述べた条件以外にも、以下のような条件が加わっています。
- MM2Hビザ保有者の更新手続き
- 世帯主の変更
- 本人、被扶養者の国籍変更はセキュリティチェックを受ける必要あり
- MM2H参加者は、入国管理局や国家警察からの定期的な監視・取締りを受ける
「マレーシア国家の安全」に配慮した内容といえます。
しかしこの新基準で最も注目された点は、
「月額4万リンギット(約100万円)以上の月収」と、「150万リンギット以上(約4,000万円)の資産要件」です。
今までの3〜4倍に膨れ上がりました..
これらの経済的要件の変更は、新規の申請者を減らし、マレーシアの経済にも影響を及ぼします。
また、「MM2Hプログラムの新しい要件は、今後失効する予定のMM2H既存保有者の延長申請に対しても適用される」という発表もありました。
しかし、この既存のMM2Hビザ保有者に対する更新要件も、現在は “方向性” しか決まっていません。
実際に、既にビザを持っている方は、今まで通りの条件で更新が行われているのが実態です。
以上のように、新規も既存も「国家の安全」を保持するために手続きや運営の厳格化の方向性は間違いないものの、あくまでも「変更予定」に過ぎません。
経済条件や、年齢要件などの詳細は、全くと言っていいほど決まっていないと言えます。
今後の考察と未来予測
マレーシアのビザ要件の変更は、アジャイル開発的(まずやってみて不都合が生じたら変更する)に進められています。
まずはリリースして、不都合が出たら、その都度変更を加えるというスタイルをとっています。
日本人は、このマレーシアの“テキトーさ”についていけず、多くの人がMM2Hの取得を諦めてしまっている方も増えているようです。
しかし、8月に資産要件や収入要件などの変更の方向性が示され、10月に受付開始と発表されましたが、11月になった現在でも、新規は受け付け停止が続き、既存の更新も従来の条件で受け付けています。
予定されている新条件の要件緩和なども、十分あり得るということです。
マレーシアでは政府の発表したものが、コロコロ変わります。
MM2Hの新規取得については、条件の変更は間違いないといえます。
しかし、変更内容が最終決定し、受け付けが再スタートするのは、2022年になってからではないかと推測されます。
また、資産要件や収入要件は、一気に上げることで申請者が激減することが推察されます。
これは政府としても経済的に痛手…おそらく調整が入ると思われます。
また、結論が出たら情報をアップデートして参ります。
変化を予期して動くのは大事ですが、未確認な情報をもとに焦って判断をすると、海外移住や海外長期滞在では大きなトラブルになります。
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